ご家族様が亡くなると、故人様の死亡届の提出や世帯主の変更届など、様々な手続きを行う必要がありますが、じつはこれらの手続きと並行して、相続手続きも行わないといけません。相続手続きには故人様の状況にもよりますが、短期間の間にたくさんの手続きや申請が発生します。
まずはどのような相続項目があるのか、だれが対象なのかを把握し、それぞれの手続きや申請をいつまでに行わないといけないのか、相続で知っておくべきポイントをまとめました。
■相続ってなに??
相続には、プラスの相続とマイナスの相続があります。一般的に皆様がイメージされている相続と言えば、銀行などに収めている預貯金や、保険金、土地や住宅を持っていれば不動産などではないでしょうか?実はそのようなプラスの相続がある一方で、故人様の負債や賠償債務のようなマイナスのお金も相続として入っているのです。そのため、相続を行う際には故人様の遺産について正しく把握する必要があります。
相続の対象範囲と相続割合
遺産相続には分割の優先順位や配分割合が法律で定まっており、基本的には①故人様の配偶者→②故人様の子や孫の直系卑属→③故人様の父親や祖父などの直系尊属→④故人様の姉弟や姪っ子の順番となっています。
ただし、法的に効力のある遺言書がある場合は、遺言書の通りに遺産が分配されますが、「遺留分」と呼ばれる、最低限貰える相続財産が法律で決まっているため、相続分割の対象にもかかわらず相続財産がもらえないという場合は、相続財産を請求することも可能です。
相続手続きが完了するまでの流れ
相続手続きは故人様が亡くなってから10か月以内に済まさなければなりません。それまでに各種手続きや戸籍謄本の収集、遺産分割協議など行わないといけないことが沢山あるため、早め早めに行動する必要があります。実際に相続が発生してから手続き完了までの流れを確認しましょう。
遺産の調査
故人様が亡くなったら、まず始めに相続があるかどうか確認しましょう。主に確認する点は以下の項目となっています。
【相続財産として可能性があるもの】
・預貯金通帳、キャッシュカード、銀行、証券会社からの郵送物など
・不動産関係、登記簿、売買契約書など
・請求書、確定申告書など
■遺言書の有無の確認
遺産があった場合は、故人様が遺言書を残しているか確認しましょう。主に自宅や入院先に保管されているケースが多いです。遺言書が見つかった場合、相続手続きの際に必要になる、検認手続きを行います。
■戸籍の収集
遺産分割協議に向けて、戸籍謄本から正確な相続対象を把握します。もし相続内容が決まった後に、遺産分割協議に参加していない相続の対象人がいた場合、せっかく遺産分割協議をした後でもその内容は無効になってしまうのです。また、相続手続きの際に戸籍謄本も必要となってきます。戸籍謄本は故人様の戸籍の本籍地の役所でもらうことができます。
■相続承認・限定承認・相続放棄(3か月以内)
相続承認
資産・負債をすべて相続する相続方法です。
限定承認
負債がある場合に、負債の額と同等の資産を相続する方法です。手続きは家庭裁判所で行います。限定承認は資産の計算方法や相続人全員が関わってくるなど様々な条件があるため、専門家にご相談されることをおすすめします。
相続放棄
資産・負債、すべて相続しないという方法です。相続放棄は家庭裁判所に指定の書類を提出します。タンス預金のように、実は後から財産が見つかったなどといったこともありますので、遺産の調査から専門家に任せるのも一つかもしれません。
■準確定申告
準確定申告とは被相続人(亡くなられた方)が確定申告を行わなければならない場合に、相続人(相続された方)が行う確定申告です。
確定申告を行っているケース
・個人事業主
・配当をもらっていた人
・不動産収入をもらっていた人
・給与所得があった人(条件あり)
・退職所得があった人
・譲渡所得があった人
・山林による所得があった人など
会社員では一般的に年末調整を行いますが、じつは確定申告が必要な場合があります。
会社員で確定申告を行っているケース
・年収が2,000万円以上ある
・複数箇所の会社から給与を得ている
・配当や不動産収入が20万円以上を超える
・住宅ローン控除を初めて受ける場合(翌年以降は年末調整で行います)
・ふるさと納税の給付先自治体が6か所以上 など
確定申告は1年の申告を2月16日から3月15日に申告するのが一般的です。しかし年度に亡くなられてしまうと確定申告ができませんよね。そのためそれを相続した方が代わりに確定申告します。これを準確定申告と言います。準確定申告は故人様が亡くなられてから4か月以内に行わないといけません。
例えば亡くなられた方が個人事業を営んでいた場合は、相続人が準確定申告を行います。
■遺産分割協議
遺言書が無かった場合、相続人全員で遺産の分け方を決める必要があります。この会議に出席していない相続対象者が現れた場合、改めて全員で協議し、相続の分け方を決める必要があるため、必ず相続対象者全員が集まれるようにしないといけません。話し合いがまとまったら、遺産分割協議書を作成し、相続人全員の実印と印鑑証明書を添付します。各種名義変更の際などに使用する場合や、相続税の申告がある場合は提出が必要です。
じつは注意すべき点が一つあります。遺産分割協議が終わらない場合も、相続税の申告は行わなければなりません。ただし「申告期限後3年以内の分割見込書」 を記入し申告書と同時に提出すれば、3年以内に遺産分割協議が完了した場合に相続税の配分を変更することができます。
払いすぎた方はきちんとその分返還されます。不足している方はその分追加でお支払いが必要になります。
遺産分割協議によって相続税の申告期限は左右されないので十分に注意しましょう。
■相続税の申告及び納税 (10か月以内)
相続財産の分割が決まったら、各相続人ごとに相続財産の評価額から相続税がかかるかどうかを計算します。相続税がかかる場合は、故人様が亡くなった10か月以内に相続税の申告と納税を済ませないといけないため注意が必要です。なお申告の際は、下記の書類も併せて申告を行います。
・戸籍謄本
・住民票
・印鑑証明書
・個人番号カードのコピー
相続控除について
じつは相続を承認したとしても、誰しもに相続税がかかるわけではありません。相続税は資産の評価額が相続税の基礎控除額を超える際に発生します。基礎控除とは税金を納めなくてもよい金額のことです。
基礎控除=3,000万円+法定相続人×600万円
例えば法定相続人が2人なら、
基礎控除=3,000万円+2人×600万円となり、資産の評価額が4,200万円まで相続税がかかりません。それを超えてしまうと相続税の申告と納税が必要になります。
相続手続き
相続対象者がそれぞれ決まれば、不動産や預貯金の口座などの名義変更を行います。
■相続手続きの際の注意点
マイナスの相続の存在
冒頭でもお伝えしましたが、相続の際にはマイナスの相続が発生する場合もあります。そのような際は、「相続放棄」や、プラスの相続だけ限定して相続する「限定承認」などでマイナスの相続を回避することも可能です。ただし、これらは故人様が亡くなってから3ヵ月以内と期限が決まっています。
相続税の申告漏れ
相続手続きが一通り済み、納税した後に「これもあった」と相続対象になる故人様の遺産があった際や、「相続税が正しく計算できていなかった」というケースが多くあります。意図的でない場合でも、追徴課税がかかる場合もあるため、そうならないためにも早め早めに動くこと、専門家に頼る等申告漏れを事前に防ぐことが大切です。
■まとめ
いかがでしたでしょうか?10か月という短い期間の中で様々な手続きや申請をしないといけないとなると、不安に感じられる方も多くいらっしゃるのではないかと思います。
のうひ葬祭では、相続手続きに関するサポートも対応しております。「どうしたらいいか分からない」「時間がなく申請関連の資料など集めるのが難しい」など、ご不安やご不明点がある場合は、当社まで一度お気軽にお問い合わせくださいませ。